noshiroshiminのブログ

能代市に住んでいる一般市民です。今、能代市の地先の海に8メガの巨大風車が56基建てられる計画が進んでいます。住民が知らないうちに風車が乱立することがないことを願い、洋上風力関係の説明会や講習会の聴講内容を書き起こしています。聴覚が不自由な方のためでもあります。これからも地元の風力発電事業の動きを記録していきます。

「欧州における洋上風力発電所の規模について」 再エネ海域法に基づく秋田県能代市、三種町および男鹿市沖における協議会 第2回 その④

前回の続きです。

「欧州における洋上風力発電所の規模について」

自然エネルギー財団 木村啓二氏

配布資料9はこちら(ご覧になれる方はぜひどうぞ)

 https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/46739

 

この協議会の動画はYouTubeで視聴できます。一番最後にリンクしておきます。

 

座 長:では3人目ということでヨーロッパの洋上風車の専門家でいらっしゃいます、自然エネルギー財団の木村様、よろしくお願いいたします。

 

自然エネルギー財団 木村啓二氏:

よろしくお願いします。自然エネルギー財団で研究員をしております木村と申します。今回ですね、欧州の洋上風力に関してご報告させていただきたいんですけれども、特に前回議論になった点について「発電所の規模」というのがどういった規模なのか、そういった点について少しお話、欧州の状況についてお話をしていきたいと思います。

 

欧州の洋上風力発電概況(2018年末時点)

一枚めくっていただいて、2ページ目、今の状況でございます。

2018年末時点の状況ですけれども、欧州ではかなり洋上風力発電が進んでおりまして、全体で1850万キロワットを既に建設されて稼働をしております。それを単純に発電所の数で割ってやると平均の発電所の規模が出てくるわけですけれども、平均の発電所の規模は今の所19万キロワットでございます。下の所で、どういった国で洋上風力発電が導入されているかということを上位5か国ですけれども、記載をしています。

イギリスが最も多く、累積の今の導入量が818万キロワットございます。2番目がドイツということで600万キロワット、その他デンマーク、ベルギー、オランダといった北海の周辺の国というのが主に洋上風力発電を積極的に導入している国だというふうに言えます。

特に、普及が進むイギリスやドイツでは、平均の発電所の規模も大きくなってきておりまして20万キロワットを超えるような状況になっています。このような状況でして今現時点の平均だけ見るとよくわからない点がございますので、次一枚めくっていただいて、推移を見ていきたいというふうに思います。

 

欧州の洋上風力発電所の平均規模の推移

3枚目のスライドですけれども、こちらは2000年の21世紀の頭、2001年からのものを示してますけれども、歴史的な経緯を見ますと次第に大規模化している傾向が見られます。図の見方ですけれども図の青の棒グラフ、こちらが平均の発電所の規模を示しています。2000年代、2001年から2010年頃までは割とその「実証プロジェクト」というのが多くて、10万キロワットを超えるものがほとんどないというような状況でございました。2010年を超えたあたりから「商業規模のプロジェクト」というのが増えてきて、そこから発電所の規模が20万キロワット、こういったものが越えるものが標準的に今なってきていますと、いうことです。

発電所の規模が大きくなることによって累積導入量、緑のラインですけれども、こちらも急速に増えてきております。また、まだ運転稼働していないものですけれども、建設中のものは更に大規模化しておりまして、30万キロワットから40万キロワット、あるいはそれ以上というふうに今はなってきています。

 

洋上風力発電所の建設海域

1枚めくっていただいて、そういった洋上風力発電所がどういった所に建設をされているかというのを示したものがこちらの図でございます。

図の見方ですけれども、図の縦軸が「水深」でございます。横軸が「離岸距離」、陸地からどれ位離れているか距離を示したものでございます。いっぱい丸があると思うんですけれども、丸の大きさが発電所の規模、大きさを示しております。色がいくつか違うかと思うんですけれども黄緑のものが建設許可済みのものです。計画中と言ってよいかと思います。黄色のものが今まさに建設を行っている建設中のもの、そして青が運転を既に開始したものということでございます。

こちらを見ていただくと、一定の傾向というのが見れるのがわかるかと思うんですけれども、やはり開発の当初は沿岸付近、水深の浅くて離岸距離が短い、或いはある種難易度が低い所、そういった所から開発が進む傾向にございました。

その他、沿岸付近の開発となりますと、今まで色々と議論されてきたかと思うんですけれども、鳥類への影響であったり景観への影響、それから沿岸地域、漁業とかされておられますしレジャーで使っていたりとか色々まあ色んな方が使っていらっしゃるということもありますので入札エリアがある程度制限されて、あまり大規模開発というのが行われる傾向にはないのかなと。

近年は、沿岸海域の制約とか技術開発とか経済性が改善をしておりまして、より水深が深い、これまでは30メートルまでと言われていたものが60メートルまではいけるんじゃないかということで60メートルまでとかですね、それから沿岸から遠い海域で大きな大規模開発が行われるようになってきたというのが見て取れるかと思います。

 

洋上風力発電所の規模と価格

次にめくっていただいて、5枚目のスライドになります。

こちらですね、よく言われるのは「規模が大きくなればなるほど価格が下がるんじゃないですか」というふうな事がございます。まあ確かに規模の影響というのはあるのかもしれないんですけれども、これまでですね、建設されているもの或いは建設予定のもので価格が決まっているものについて、イギリスとドイツの状況について、規模と価格との関係というのをちょっと見てみたものがこちらの図になります。縦軸は各発電所の25年間の「平準化価格」を示しています。横軸が「発電所の規模」を示しています。もし、規模が大きくなればなるほど価格が安くなるのであれば、単純に右肩下がりの傾向になるはずです。こちらの図を見ていただくとわかるかと思うんですけれども、両国において、大規模化することで価格が単純に下がるという明確な傾向というのは今のところ見られないということであります。

これは何を意味するかということなんですけれども、要は、発電所の規模…もしかしたら関係しているかもしれないんですが、他の要因が影響して価格低下に貢献している可能性がありますよ、ということです。

これについては後程時間がありましたら参考資料の方でご説明をさせていただきたいというふうに思います。

 

英国の洋上風力発電の開発海域入札の概要

欧州における洋上風力発電の規模についていくつか経年的***・立地・価格等をご説明しましたけれども、次に洋上風力発電を各国どういうふうに進めてきたかという点につきまして、今のところ欧州一の導入国であるイギリスを事例にご説明をしたいと思います。

イギリスでは、かなり先駆的におよそ20年前から洋上風力の開発を進めてきております。

これまで海域利用権のリースをしているんですけれども、これまで4回ほど、ラウンドとしては実施しています。

最初の「ラウンド1」で、2001年は今から20年近く前に行われたんですけれども、やはり最初ということもありまして小規模な実証的なプロジェクトを対象にして、事業者に経験と知識を身につけさせるということを目的に、18のプロジェクトが採択されています。実証的プロジェクトということもありまして平均の発電所の規模というのは8万キロワット程度でした。

それから「ラウンド2」になりまして、ようやく知見とか実績が高まってきたということもありまして商業規模のプロジェクトというのが「ラウンド2」で採択されるということになってきています。この時の発電所の平均規模が38万キロワット。

「ラウンド3」では、国のエネルギー政策の中で洋上風力発電が有望だということで国を挙げて2020年まで13ギガワット。ギガワットというのは100万キロワットの単位ですから1300万キロワットの洋上風力発電を建設しようということで、領海を越えて、経済的排他水域までリース可能な海域を広げて、18の大型プロジェクトが生まれております。大体この辺りになると平均の発電所の規模100万キロワット。

ちょうど今まさに「ラウンド4」をやっております。これは2030年を見据えて更に洋上風力発電を増やそうということで、「ラウンド4」では700万から800万キロワットの発電所のリース。発電所の規模分のリースを4つの海域で行う予定にしております。

「ラウンド4」で特徴的なのは、リースを行う4つの海域でバランスよくプロジェクトを採択するということを検討しています。事業者に、1事業者が全部を取ってしまわないように、偏りが生じないように、1事業者で取得できるプロジェクトの数とか規模、そういったところを制限をしています。

これの心は何かと言いますと、やはり市場の多様性を維持して事業者同士の競争環境を将来にわたって確保していくと、いうためかということです。特にイギリスでは2014年から入札制度を導入をしていますので、入札を行うためにはいろんな事業者が競争していただかないと入札にならないわけですので、そうした事業者間の競争環境を政策的に確保するためにこういったバランスを取っているということかと思います。

 

まとめ

まとめですけれども、欧州ではこれまでお話してきたように、かなり長い期間に渡って長期的な導入計画を掲げて段階的かつ継続的に洋上風力発電の普及拡大に取り組んできたというふうに言えます。

今回のご報告の主題であります「発電所の規模」につきましては、発電所の技術であったりとか産業の発展段階、こうしたものと相まって進んでおりまして、足元で運転開始しているものは20万キロワット位で、建設中のものが40万キロワット以上ということで、全体の方向としては大規模化の方向にあるんですけれども、それが段階的に進んできているよ、ということが見て取れるかと思います。

またその洋上風力発電を進めるときに、先程も言いました通り、当初沿岸部から開発されていったわけなんですけれども、そういった海域を設定する際にはもちろん海域を利用される様々な利害関係者の方との調整とか環境影響等はしっかりと考慮されているということでございます。

リースされる海域の規模も、風力発電産業の発展段階に応じて段階的に拡大されてきたということでございます。特に、入札制を導入してからは事業規模の上限といったものを入れていって寡占的にならないように市場の多様性を維持して競争関係を確保するんだということも考慮されるようになってきているということでございます。

これまで欧州の知見を若干ご説明させていただきましたけれども、日本においても海域の設定とか入札規模等をご検討される際に、こうした事例というのがご参考になればというところでございます。

ちょっともう時間がないですね。なので後程のコストの話は参考資料でさせていただきますので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。

 

座 長:はい、ありがとうございました。質問を頂戴したいと思います。

 

以上

次回「質疑応答」に続きます。

 

★ 文字起こしの際、読みやすくなるよう若干整文してあります。

★ どうしても聞き取れなかった箇所は ※ ※ ※ としてあります。

 

 

 

今回の動画はこちら↓ 1:29:07頃から


2019/12/26秋田県内両協議会