noshiroshiminのブログ

能代市に住んでいる一般市民です。今、能代市の地先の海に8メガの巨大風車が56基建てられる計画が進んでいます。住民が知らないうちに風車が乱立することがないことを願い、洋上風力関係の説明会や講習会の聴講内容を書き起こしています。聴覚が不自由な方のためでもあります。これからも地元の風力発電事業の動きを記録していきます。

「ハタハタの生態」再エネ海域法に基づく秋田県能代市、三種町および男鹿市沖における協議会 第2回 その③

前回の続きです。

「ハタハタの生態 ~沿岸浅海域の利用状況~」

日本海区水産研究所 藤原邦浩氏

配布資料8はこちら(ご覧になれる方は是非どうぞ)

https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/46739

 

この協議会の動画は YouTube で視聴できます。一番最後にリンクしておきます。

 

 

日本海区水産研究所 藤原邦浩氏:

ご紹介ありがとうございます。日本海区水産研究所から参りました藤原と申します。

私のほうの組織としては国立研究開発法人ということで本部は実は横浜にあるところです。

ただ秋田県水産振興センターさんと共同で色々ハタハタの調査をやっている、そういう日本海全域の方の担当をしております。どうぞよろしくお願いします。

 

日本海の代表種 重要底魚資源

では始めさせていただきますけれども、ハタハタ、今日は漁業者の皆さまがおられるということで、私から言う話でもないんですけれども、もう皆さんご存じの通り、秋田県では極めて重要魚種とされておられます。この12月などの非常に時化(しけ)が強い時期に波が多くてなかなか沖に出られないような状況の中で、ごく沿岸に唯一来遊する大きな資源ということで、雷音が鳴る所の魚偏に雷と書くような字もあると同時に、そういうキツイ所の海の恵みということでハタハタというのは魚偏に神と書くこともあるということになっております。ひとつ唯一戻りますと底魚(そこうお)資源という表現が実はありまして、これはあくまで底の方につく、ハタハタ、砂に潜る習性があります。それで、そういう資源であるというふうに一応お伝えします。

 

秋田県 定置網船の水揚げ

2ページ目をご覧ください。

同じく秋田県男鹿半島周辺の12月の状況を振興センターさんの顧問さんより写真をいただいておりますけれども、小さい小舟がこのような形でごく沿岸で漁をするというのが季節ハタハタ漁として有名です。各地で人が集まってくるような状況で半分僕は見せていただいた当時なんかはすごく田舎の小さな地域でもお祭り騒ぎのような状況になるということで、秋田県では極めて重要ということはよくわかるかと思います。

 

ハタハタの生息域と産卵場

では3ページ目ご覧ください。

秋田県が極めて重要というふうにはあるんですけれども、ハタハタ、実は生息水域は思った以上に大きくてですね、北海道の周辺にもいますし、遠くは韓国の東岸にもハタハタはいます。日本海全域で基本的には重要資源とされていると、いうところです。

ただし、秋田県が極めて重要だというのは、生態に特に「産卵」というところで重要になりまして、秋田県男鹿半島周辺を中心とする「大産卵場」のできている所というところです。日本海全域で言えば、まあ地域的には少しはあるんですけれども、小さいものはありますけれど、同じ容量で大規模に産卵場があるというのは、韓国の東岸38度線ぎりぎりのラインの辺りにあるということが知られています。

こういうの資源管理などをするためには、その産卵場由来の遺伝的なところも調べた上でおよその範囲の中でやるんですけれども、そういう意味では日本海の方は、この韓国東岸の群れと秋田周辺で生まれた群れ、この「ニ大産卵場に由来する2系群」という表現があるんですけれど、それに存在、それを管理している状態になります。「日本海西部海域」という表現があって、能登半島以西から島根県沖までは実はこの両群が来遊するという形で混在してしまうので別途扱わざるを得ないと、いうところになっていると、そういうようなかんじになっています。

ちなみに韓国の東岸は定置網ではなくて刺網で多くが漁獲されているということになっています。

 

ハタハタの生活史および生活年周期(模式図)

4ページ目をご覧ください。

今みたいに広域にいる魚種でもあるんですけれど、「ハタハタの生活史及び生活年周期」という《模式図》を作りました。

「生活史」というのは一生涯のことを言います。魚の一生涯のことを示す場合に言います。寿命はおよそ5歳と言われているのが後で出てきます。

「生活年周期」という表現は、一年間どのような形で生息するか、というようなところを示しているということです。こちらの図は基本的には小さいものから大きいものまで全部書いてあるので生活史っぽいですけれども、あくまで「生活年周期」の図になろうかと思います。

藻場、先程写真でお見せした、ごく沿岸には藻場がありまして、そこに卵が産みつけられて1月2月ごろに孵化をして、その後、浅い方からどんどん深い方に向かって行って、水深200メートルよりも深い方に半年位で入って行きます。水温で言うと3℃位になろうかと思います。その後大きく回遊をしまして、春・秋と、成魚などで各地で底魚の重要資源として使われます。最終的には成熟をして、大体2歳以上になりますけれども産卵期のみ、ごく真冬にまた藻場に帰ってきて産卵をすると。このような形で秋田県のごく沿岸を利用しております。

 

日本海北部のハタハタ漁

では5ページ目ご覧ください。

5ページ目は、改めて漁業としてどういう資源なのかというのを写真でご説明をしています。

秋田県男鹿半島は先程の写真の通りで、これは定置網というところのものです。右下はちょっと見にくい写真ですけれども、ハタハタの定置網というものが敷設されている図になります。左に堤防があるのがわかるかと思いますけれど、ごくごく本当に沿岸で漁をしているという典型例になっております。それ以外のところの特に12月以外の季節には実は水深200メートル以深に存在していまして、佐渡周辺などの写真を出していますけれど小型底びき網という、底びき網漁業で漁獲をされています。

 

日本海西部のハタハタ漁

更に6ページ目ご覧ください。

能登よりも西側にもいるという話、これは秋田県生まれがどの位いるかとか、韓国東岸 のがどの位いるかが未だによくわからないという状態で遺伝的には実は分けようがないというものでも混在しているんですけれども、そちらの方では隠岐の周辺海域は鳥取県兵庫県の沖合底びき網は多く漁獲をしておりまして、能登半島周辺、若狭湾では小型底びき網のやはり200メーターから500メートルで獲られています。

 

日本海におけるハタハタの漁獲量の推移

では少しだけ7ページ目ご覧ください。

よくハタハタは禁漁もあって、秋田県の禁漁も全面禁漁もあって、漁獲量の推移などを見て資源の話をしているので私どもの方では資源評価というものもやっておりまして、そちらの図になっております。

これは日本海北部というのが秋田県が含まれる新潟、青森から新潟の海域。太い線になっているのが石川県から島根県日本海西部、そして韓国の漁獲量と、1955年頃からの統計がありまして、このように非常に1970年代に多く獲れていたにもかかわらず、特に日本海北部などは1990年代の前半に0(ゼロ)に近い状態になったと。これで全面禁漁を秋田県さんがされて、その後ある程度回復をしていると、いう図になっております。ただしこれ、漁獲量です。今現在は漁船隻数が1970年代に比べると大幅に減っていまして、半分から3分の1になっていますので、これではさすがに資源量の推移としては不適切というふうに考えられます。

 

ということで、資源評価の方では8ページ目ご覧ください。

別途統計があるものを個別に見るという形をとっておりまして、日本海西部の方では先程の「底びき網漁」の漁獲成績報告書というものがありまして、そちらの漁獲情報を基に同じように資源動向を見るような形の図になっております。これでもまだまだ不足があるんですけれども、現在は西部の方では比較的高い所で安定している状態になっていると。ただし、一番最近年までの情報まで使える《調査船調査に基づく》ものとして「減少」と書いていますけれど、動向というのも判断していまして、直近5年で説明をするんですけれど、そういうものは現在は「減少」になっています。日本海北部の方は図から示しますと「中位・増加」という表現になりますけれども、調査船動向で見てもこのような高い数字で動向は増加ではないんですけれど基本的にはこのような図になっていると。この辺は更に近年、定置網の量が非常に減っているというのも重々承知しておりまして、感覚的にズレがあるというところはあろうかと思います。その辺は資源評価の方にどんどん反映をしていくべく水産振興センターさんと協力して今続けています。今日は資源評価の話ではないので次に移らせていただきます。

 

夏に資源調査を実施

9ページご覧ください。

このようなものの関係で夏に資源調査という、いわゆる分布調査をさせていただいていまして、資源量を直接的に推定するというもので、日本海西部はほかの魚種も含めますので、色々な調査点があるんですけれども140点、日本海北部は近年2016年からスタートしていますけれども50点ほどの定点で調査をしています。今日この分布図をお見せしたかったんですけれども、一応まだ公表できていないものですので、今日は差し控えさせていただきます。

 

年齢と成長(体長・体重)

そのような分布調査をしながら、10ページ目をご覧ください。

そういうもので獲れたものの年齢を推定を観察等でやります。ハタハタの耳石(じせき)というのが左にありますけれども、これは頭部にある三半規管のような所にある骨なんですけれども、これを使ってこれを輪切りにすることで木の年輪のようなものがありまして、それで調べた結果です。そうなりますと寿命は5年程度と言われてまして、体長でいうと尻尾のない状態の数字ですので、手の平よりもかなり大きい状態でようやく5年ということになります。だいたい10センチ位で1歳。15センチ程度で2歳。秋田県産なので3歳にかなり近い位の180ミリ位のものが2歳のギリギリいっぱいのような魚種がいっぱいあるというかんじです。3歳、4歳と、漁獲の主体は2歳から4歳と設定しています。

 

ハタハタの分布回遊(模式図)

11ぺージご覧ください。

分布図、今日お見せできませんでしたけれども、分布等をあと漁獲状況を加味しまして模式図を、ハタハタの水平的な分布回遊を模式図に示しました。基本的には0歳で生まれて、秋田県の近辺で生まれて1歳2歳となっていきながら南下するということが知られています。特に0歳と1歳の、実は南下状況はまだ未だにわかっていないんですけれども、1歳が周辺多いのはやはり能登周辺海域と隠岐周辺海域ということになっているのでこのような図になりまして1歳2歳で、オスは1歳、メスは2歳で成熟を始めるので、それで産卵場に配置するという形の図になっております。実は大和堆(やまとたい)という所でハタハタ、実は存在していまして、水深500メートル位までしか分布しないんですけれども、それよりも深い所が大和堆に行くにあたってはあります。なので実は中層を泳いでいるであろうというふうに言われているんですが、今現在それは調査中という形になっています。このくらい実は水平分布もよくまだわかっていないことがいっぱいあるということです。

 

ハタハタの資源生態と研究進捗

12ページご覧ください。

ここまでの話としてハタハタの資源生態とそれにまつわる研究進捗というところを簡単にまとめました。

実は日本海全域にいる魚であるということと、水深200から500メートルが基本的な中心の分布です。ただし秋田県沿岸には産卵場、もしくは生まれたての状態でごく沿岸に来遊していると、出現しているというのが大きな特徴になっています。

大産卵所は2系群。日本海北部系群は秋田周辺で生まれて南下をして成長と共にまた北上して産卵という形ですが、明確になっていないところもいっぱいあります。

簡単にまとめてしまうと、「秋田県沿岸にいるのは、親の産卵期12月前後である」ということと、「子どもの場合は生まれたての1月5月ぐらいにいる」ということになるかと思います。

もちろん風力発電はごく、ごくごく浅い水深30メーター程度ということをお聞きしていますので、そう考えると5月までいるかと言われれば、確かにいないと思いますけれども、その辺は実はよくわかっていないのも確かです。

研究途中としては、日本海の中層域も泳いでいる可能性がありますけれど、その辺がわからない、一部の南下の状況もわからない、というところで現在調べていまして、こういう海のフィールドで調べるものというのは水温や潮流(海流)、分布回遊等で程度しか関係性を見れませんので、そこを見ようとしています。ただその辺にすごく強く影響されている魚種であるという可能性は高いと考えています。

資源変動は極めて緩やかなんですけれど、ごく数年で結構動きますので、稚魚に何か影響を与える場合は非常に問題があろうかと思います。そういうところも少し気にしておく必要があると思っています。

 

秋田県周辺におけるハタハタの鉛直的分布の模式図

13ページご覧ください。

※ ※ ※ の所で秋田県の周辺のハタハタの今度は鉛直分布、最初によく似た図に出てましたけれども調べております。これもお借りした図ですけれども、水温も関係している所、ちょっと少し赤印で書いております。水温の影響を見ながら実は分布が見られるというところが大きくおもしろいところであると同時に、稚魚の頃の成育場として※ ※ 生まれて保育場として極めて重要と考えられます。

 

ハタハタの沿岸浅海域の利用状況

14ページに少しその話をまとめました。

「分かっていること」という所は、先程お伝えした通りです。

産卵期の沿岸の水温は、実は14℃以下にならないと産卵に来ないという結構極めて限定的な数字が実はわかっています。あと稚魚が13.2℃以上には分布していなかったという知見があります。

浅海域の「鉛直水温」が色々変わる状況が起こりえるのであれば「分布水深」というのは極めて重要で、その後の大きく回遊するタイミングとかをズラしてしまう可能性があるので、ある程度のモニタリングが必要と思っています。

 

ということで、ここまでで一応資料は終わりになりますけれど、最後に簡単に少しだけ海上風力発電の影響ということも少し気にする必要があるんですが、現状私から言えることは私が分野が少し違うというというのもありますけれども、「ハタハタへの影響は解明されていない」というのが現状だと思います。「ハタハタの生態としては、産卵場・保育場として利用していることを加味して色々調べる必要があろう」ということです。

更に風車の土台のような所が漁礁のような効果があると、人工漁礁のような効果があると、ある知見ではあると言われているそうですので、どのようなものが集まっているのか、ハタハタはそこに居つくのか居つかないのか。実は居ついたからといって良いわけではないと僕は思います。広域魚種ですので、出ていかなければ本来いけないものが居つきますので、それは問題になるかと思いますので、そういうことをふまえてモニタリングが少し必要であろうということです。

更に言えば、ここで言うとモニタリングと言ってもなかなか難しいので、漁業との協調という観点でデータの潮流(海流)だとか水温だとか、そういうところ生物がどの位いるのか、それは観測ブイやカメラなどでリアルタイムに情報を出すということもあっていいのじゃないかということです。以上で終わりたいと思います。

 

座 長:はい、ありがとうございました。では3人目ということでヨーロッパの洋上風車の専門家でいらっしゃいます自然エネルギー財団の木村様、よろしくお願いいたします。

 

以上

次回に続きます。

 

 ★文字起こしの際、読みやすくなるよう若干整文してあります。

★どうしても聞き取れなかった箇所は※ ※ ※としてあります。

 

今回の動画はこちら↓  1:10:28頃から


2019/12/26秋田県内両協議会